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みかんと僕と君。

近況

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パリは今日も寒い。

 

最近はマイナスまではいかないが、気温は3~4度といった具合である。

 

ヨーロッパの冬は長いというが、確かにその通りだ。

空に浮かぶ、重く折り重なった雲が地上に影を作り、景色は全体的にほの暗い灰色。

日が差さない日などは、本当に気が滅入りそうになる。

 

日本の晴れやかな日々が懐かしい、そんなことを考えながら家路に着いていた。

 

気になったみかん

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朝から喉が痛いのは、昨日飲み過ぎたからだろうか。

調子に乗って晩酌しながらワインを一人で一本開けてしまったことが悪かったのか。

多分、飲み終わってそのまま寝てしまったことがその原因に違いないだろう。

「あー薬局に寄って家に帰らないとな」と最寄りの駅でふと思い立ち、Googleの検索で一番近い薬局を探す。

 

家とは反対の方向だったが、今回は帰宅よりも自分の健康のことを優先することにした。

 

駅から歩くこと5分、目的地に到着。

スーパーと併設している薬局だったため、先に夕食の買い物を済ませてから薬局へと行くことにした。

 

元々ビール会社でスーパーマーケットの担当をしていたこともあり、僕はスーパーが好きだ。特に海外のスーパーは日本にはないものがたくさんあるからか特別ウキウキする。

 

正直言うと海外にしか売っていないお酒やおつまみなんかを買いたいが、今日は自分の喉に良さそうなものを買って帰ることにした。

 

青果コーナーで果物を探す。

「うちにバナナはあるから、何か柑橘系が欲しいなぁ......あ、みかん。」

 

いつもは気にも留めないが、今日はみかんが気になった。

旬なのか台に山盛りになったみかんが売られていた。種類がいくつかあったが、とりあえずネットに9個入りの3ユーロのものを手に取った。

 

スーパーから家までの帰り道は、妙にバッグの中でゴツゴツと存在感を示すみかんのせいで頭の中がいっぱいだった。

 

みかんと彼女

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夕食を済ませ、楽しみにしていたみかんの時間となった。

 

日本の冬といったらみかんとこたつなんて言うが、僕の実家も紛れもなくその例の一つに挙がるだろう。

もっとも、僕の実家は静岡なのでそこに緑茶も欠かせないのだが。

 

パリにはこたつこそないが、緑茶はある。

みかんと緑茶。それだけでもすごく幸せで贅沢な響きのように感じた。

 

今日に限ってなんでみかんを手に取ったのか。

風邪をひいているから?いや、そうではなかった。

スーパーでみかんを見かけたときに、ある女性のことを思い出したのだ。

 

その女性とは僕の大学時代の同級生。

お馬鹿なキャラのくせに実は頭がキレて勉強ができる、みんなからの人気者。

細身の見た目とは裏腹に、冬になると通販でみかんを段ボールで箱買いするという一面がある。そのことを毎年聞かされていたから、みかん=彼女という風に僕の頭が勝手に解釈したのだろう。

 

思い返すと彼女と僕はいつも一緒だった。

入学当初に仲良くなって、それは大学卒業までずっと続いた。

授業も一緒だったし、遊びに行ったり、グループで旅行に行ったり、授業をサボるときも一緒だった。

あまりにもいつも一緒にいるからか、周りからは「二人は付き合ってるの?」なんて聞かれたこともある。

 

でも実際そこには友人の関係しかなかった。

お互いに恋人もいたからか、いつの間にか親友のような絆が生まれていたのだろう。

 

ただある時、彼女からこんなことを言われた。

 

「私さ、結婚するなら太郎とがいいな。」

 

学食で日替わり定食をかきこんでいた僕は、盛大に吹き出した。いや、定食ではなく味噌ラーメンだったかもしれない。まぁそれはこの話には関係はないのだが。

 

 

え、何それ?どういう意味?彼氏いるじゃん!

当時結婚なんていうことが遠い将来のことのように思えていた僕は、彼女の発言に戸惑いを隠せなかった。

 

「んーなんかそう思っただけ。」

 

ふーん、そうなんだ。

なんて強がってはみたものの、内心はドキドキしていた。

 

そんなことを言われた後も、二人の関係は仲の良い友人のままだった。

途中でお互いの恋人が変わることはあっても、二人が付き合うことはなかった。

そして時間の流れとともに大学の卒業となった。

 

みかんと僕たち

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大学卒業後も彼女とは年に数回は会う。

ただここ1~2年は僕が海外に出てしまっているために、たまにSNSで連絡をするくらいだ。

 

彼女は今どうしているのだろう。

 

「結婚するなら太郎がいい」なんて彼女に言われてからもう10年近くの時間が流れている。なんだか時間の経過とともに、いつの間にかお互いが結婚という言葉に似合う年齢になってしまった。

 

最後に連絡した時、彼女には恋人はいないと言っていた。

目の前のみかんを見つめながら、彼女のことを考えてみる。

 

 

 

 

 

 

彼女は背は高くてスタイルは良く、英語は話せるし大きな会社で仕事も頑張っているし、内面も明るい素敵な女性だ。きっと社会人になってからも周りから人気があるに違いない。

 

 

 

 

「昔からお互いのことを良く分かってるし、結局あいつが一番合っているのかなぁ。」

 

 

 

 

昔の思い出を美化しているのかもしれないが、なんだか妙に気になってしまう自分がいる。

 

 

 

 

 

連絡してみようかな、このみかんを食べたら。

 

 

 

みかんの皮に指を突き立てる。 

 

 

 

フランス産だからかなのか、日本のみかんより皮が固い。なんとか皮がめくれると、柑橘系特有の甘酸っぱい香りが部屋に広がった。なんだか懐かしい感じだ。

 

「あーこの感じ、この感じ。」

 

 

 

「......それにしてもこのみかん皮がむきにくいなぁ...」

 

 

 

「あ、やっとむけそう...だ......」

 

 

 

「え...これって......」

 

 

 

 

僕の目の前に現れたもの。

 

 

 

 

 

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そう、そこには赤々とした果肉がテカテカと光る、旬真っ盛りのフランス産の小ぶりなブラッディーオレンジが佇んでいた。

 

 

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僕が彼女に連絡をする日は、まだ先のことになるだろう。

 

 

 

明日僕が起きて真っ先にすること、それは記事批判のコメントに目を通すことではなく、今日買い忘れた風邪薬を買いに行くことだ。

 

おやすみなさい。